補助金の申請において、重要な役割を果たすのが「経営計画書」です。
補助金の目的は、単なる資金の支援ではなく、中小企業や個人事業主が自社の経営を見つめ直し、持続的な成長・経営力の向上を後押しすることにあります。
そのため、提出される計画書が市場の環境変化や自社の強み・特徴を捉えた経営者の課題認識となっているのか、将来の展望や今後の計画について実現可能な数値や根拠をもとに的確に示されているかどうかが、採択可否に大きな影響を与えます。
本記事では、中小企業診断士としての申請支援の経験をもとに、経営計画書を作成する際の基本的な考え方と実務上のポイントを整理します。

目次
1. 現状の経営課題を的確に分析・整理する
経営計画書では、「補助金を活用するに至った背景」が非常に重視されます。
単に「業績が厳しい」「効率を上げたい」といった抽象的な表現ではなく、できる限り自社の経営状況を数値や事実に基づいた客観的な分析を行うことが重要です。
例:
- 営業利益率が業界平均よりも◯%低い
- 顧客単価が年々減少している
- 従業員1人あたりの作業量が過大で、離職が発生している
こうした客観的な情報をもとに、自社の経営課題の原因を掘り下げ、現在の経営状況を整理することで、補助金を活用して実施することが明確になります。
2. 投資内容と課題の関係性を明確に示す
補助金で導入を検討している設備やサービスが、「どのように自社の課題解決に寄与するのか」を具体的に説明することが不可欠です。
「課題 → 対応策 → 期待効果」という流れで記載することで、読み手の理解を得やすくなります。
例:
課題:〇〇業務に時間がかかっており、生産性が低い
対応策:本設備を導入し、自動化を図る
期待効果:作業時間を30%削減し、人的資源の再配置を実現する
設備やサービスのスペックに終始するのではなく、「なぜ必要なのか」「どのような変化が見込まれるのか」等、自社ならではの経営状況に焦点を当てながら導入する設備やその効果について明確に示しましょう。

3. 実現可能なスケジュールと体制を記載する
補助金事業は、期限内に事業を実施・完了させることが前提となっています。
そのため、計画書には具体的かつ実現性のあるスケジュールと体制が求められます。
記載の際は以下の点に留意しましょう。
- 設備の選定・発注・納品・稼働開始までのスケジュール
- 導入後の運用体制(責任者・担当者・教育体制)
- 外部協力機関(ベンダーや支援機関等)の役割分担
実行可能性が高いと判断されるほど、計画の信頼性は高まります。
4. 数値で成果目標を設定する
事業計画は、「この取り組みで、どのような成果が見込まれるか」を示すものです。
そのため、可能な限り数値を用いた目標設定が求められます。
例:
- 月間生産数:◯%増加
- 作業時間:月間◯時間削減
- 新規顧客獲得数:年間◯件増加
目標数値は、根拠となる過去データや市場情報と整合性を持たせることが重要です。
あくまで“実現可能な範囲”で設定しましょう。
5. 経営者としての意図・展望も記載する

計画書の構成にもよりますが、経営者自身の言葉で今後の事業ビジョンや方向性を述べることで、全体の計画に一貫性と熱意が生まれます。
たとえば:
- 地域との共生を図りながら持続可能な経営を実現したい
- 従業員が働きやすい環境を整備し、定着率を向上させたい
- 次世代への事業承継に向けて、基盤を強化しておきたい
こうした「なぜこのタイミングで投資を行うのか」という背景を補完するメッセージがあると、読み手の理解が深まります。
経営計画書は、補助金採択だけでなく「今後の経営の地図」にもなる

補助金申請のために経営計画書を作成することは、自社の現状や課題、方向性を言語化する機会でもあります。
採択の有無にかかわらず、今後の事業運営における指針や、社内の共有資料としても活用できる内容となります。
中小企業診断士は、補助金申請の計画書作成支援だけでなく、
- 経営課題の可視化
- 計画実行に向けた伴走支援
- 補助事業後の振り返りと次の一手の検討
といった中長期的なサポートを行うことが可能です。
経営計画書の作成や申請にご不安のある方は、是非こちらからご相談ください。