2026年11月16日から、京都府の最低賃金が現在の時間額1,122円から1,180円へ引き上げられます。
人件費や原材料費など、さまざまなコストが上昇する中、「さらに人件費が増えるのか」と不安を感じている中小企業の経営者の方も少なくないのではないでしょうか。
もちろん、賃金の引上げは企業にとってコスト増につながります。
しかし、単純に「人件費が増える」と捉えるだけではなく、これを機に仕事の進め方や生産性を見直すことも重要です。
今回は、賃上げをきっかけに中小企業が考えたい「生産性向上」についてご紹介します。
目次
「人件費を抑える」だけでは対応が難しくなっている
人件費が上昇したとき、まず「人件費をどう抑えるか」を考える企業もあるかもしれません。
しかし、人手不足が続く中、賃金を抑えることだけで経営を維持していくことは難しくなっています。
人材を採用し、長く働いてもらうためにも、一定の賃金水準や働きやすい環境を整えることは、今後ますます重要になります。
だからこそ考えたいのが、「同じ時間・同じ人数で、より大きな価値を生み出せないか」という視点です。
人件費の増加だけを見るのではなく、業務の進め方そのものを見直すことが、持続的な経営につながります。
生産性向上は「設備を入れること」だけではない

「生産性向上」と聞くと、新しい設備やITツールを導入することをイメージする方も多いかもしれません。
もちろん、設備投資やデジタル化によって業務時間を短縮することは有効です。
しかし、その前に考えたいのが、現在の業務に無駄や重複がないかということです。
例えば、同じ内容を複数のシステムへ入力している、紙で管理しているため転記作業が発生している、特定の人にしかできない仕事が多い、昔から続けている業務を目的が曖昧なまま続けている、といったことはないでしょうか。
こうした業務を整理するだけでも、仕事にかかる時間を減らせる可能性があります。
例えば、飲食店であれば、在庫確認や発注、予約管理、シフト作成などに時間がかかっていないか。製造業であれば、手作業で行っている工程や、特定の従業員にしか操作できない設備・業務がないか。
小売業であれば、売上データの集計や在庫管理、SNSでの情報発信などに必要以上の時間を使っていないか、といった視点で確認してみるとよいでしょう。
「毎日30分かかっている作業」「毎月数時間かかっている集計」「担当者しか分からない業務」など、小さな業務から洗い出してみることが、生産性向上の第一歩になります。
大切なのは、いきなり設備やシステムを導入するのではなく、まずは「どの業務に、どれくらい時間がかかっているのか」を把握することです。
「人にしかできない仕事」に時間を使える環境をつくる

業務を見直す目的は、単純に仕事を減らすことではありません。
定型的な作業や繰り返し業務を効率化することで、社員がより付加価値の高い仕事に時間を使えるようにすることが重要です。
例えば、顧客とのコミュニケーション、新しい商品やサービスの企画、技術やノウハウの継承など、人だからこそ価値を生み出せる仕事があります。
限られた人材で事業を成長させていくためには、「何を効率化するのか」と同時に、「人に何を任せたいのか」を考える必要があります。
京都市にも「生産性向上+賃上げ」を支援する制度があります
「業務を見直したいと思っても、設備投資まで考えると費用負担が大きい」と感じる企業もあると思います。
京都市では、市内の中小企業等を対象に「賃上げ環境整備支援事業」を実施しています。
この制度では、中小企業診断士による伴走支援を受けながら、業務プロセスの改善・最適化に取り組み、省力化・生産性向上につながる設備投資や機器購入を行う場合に、その費用の一部が補助されます。
2026年度は、一般枠が補助率2/3以内・上限200万円、小規模企業者枠が補助率4/5以内・上限100万円となっています。なお、実績報告時には、直近1か月分の給与支給総額を基準月(2025年12月)と比較して1.9%以上増加させることが要件となっています。
単に「設備を購入するための補助金」ではなく、専門家と一緒に業務の進め方を整理したうえで設備投資を行い、生産性向上と賃上げにつなげていく制度である点が特徴です。
▼賃上げ環境整備支援事業
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000353664.html
最低賃金の引上げを「コストが増える出来事」として捉えるだけではなく、自社の業務や働き方を見直すきっかけにする。
その視点が、これからの中小企業経営ではより重要になっていくのではないでしょうか。
まずは「今の仕事」を見える化することから

生産性向上というと、大きな設備投資や抜本的な改革を想像してしまうかもしれません。
しかし、最初から大きく変える必要はありません。
まずは、社員がどのような仕事に時間を使っているのか、時間がかかっている業務は何か、特定の人に仕事が集中していないかを整理するところから始めてみてください。
そのうえで、「やめられる仕事」「効率化できる仕事」「人が担うべき仕事」を分けて考えることで、自社に合った改善策が見えてきます。
自社に合った京都市の支援制度を確認してみる

生産性向上といっても、「設備を導入したい」「ITを活用したい」「従業員の育成や職場環境を改善したい」など、企業によって課題は異なります。
京都市では、こうした課題に応じた中小企業向けの支援制度が用意されています。
例えば、ITツールの導入や業務のデジタル化を進めたい企業向けには「京都市デジタル化推進プロジェクト」があり、専門家と一緒に課題を整理しながら、ITツール等の導入を進めることができます。
▼京都市デジタル化推進プロジェクト
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000349674.html
また、人材育成や働きやすい職場づくりを進めたい企業向けには「中小企業ひと・しごと環境魅力向上支援事業補助金」があり、2026年度は補助率4/5以内、上限60万円で、人材育成や多様な人材が活躍できる就労環境整備等を支援しています。
▼中小企業ひと・しごと環境魅力向上支援事業補助金
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000351813.html
京都市では、京都市・国・京都府の主な事業者向け支援制度をまとめたページも公開しています。補助金は募集時期や対象要件が制度ごとに異なるため、「自社の課題に使える制度がないか」という視点で定期的に確認しておくとよいでしょう。
▼京都市 事業者向け支援制度
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000268990.html
最低賃金の引上げを、自社を見直すきっかけに
最低賃金の引上げは、中小企業にとって決して小さな負担ではありません。
だからこそ、単純に「人件費がいくら増えるのか」だけを見るのではなく、「今の人数・時間で、より大きな価値を生み出すにはどうすればよいか」を考えるきっかけにすることが重要です。
まずは今の業務を見える化し、無駄な仕事や効率化できる仕事を整理する。そのうえで、必要に応じて設備投資やデジタル化、人材育成などに取り組んでいく。
すべてを一度に変える必要はありません。自社の課題に合わせて、一つずつ改善していくことが、生産性向上と持続的な賃上げにつながっていきます。
橋本経営相談事務所では、こうした業務の整理や経営課題の見える化、生産性向上に向けた取組に加え、活用できる補助金・支援制度の整理についてもサポートしています。
最低賃金の引上げをきっかけに、これからの働き方や業務のあり方を一度見直してみてはいかがでしょうか。