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はじめに:事業承継は“ある日突然”では間に合わない
年末が近づくこの時期、経営者の皆さまの中には「そろそろ来期の計画を立てよう」と動き始めている方も多いのではないでしょうか。
一方で、日々の経営に追われる中で、「事業承継」については“まだ先の話”と感じている方も少なくありません。
しかし、事業承継は“ある日突然”では間に合わないテーマです。
経営者の交代は、単に「社長が変わる」だけではなく、組織の文化・顧客との信頼関係・経営への想いといった“目に見えない資産”を引き継ぐプロセスでもあります。
そのためには、少なくとも5年ほどの引継ぎ期間を想定しておくことが望ましいとされています。
来期の経営を見据える今だからこそ、「誰に」「何を」「どう引き継ぐか」を少しずつ整理し、将来への“設計図”を描き始めることが大切です。
1. 事業承継を「先送り」にしないために

中小企業庁が発表した「2025年度に認定支援機関等が実施した 事業承継・引継ぎ支援事業」報告によると、2018年時点での後継者不在率が67.2%をピークに、2023年時点では 54.5% に低下していると報じられています。 (引用元データはこちら)
改善傾向が続いているものの、引き続き高い水準となっています。
その背景には、
・“まだ自分は元気だから”という心理的な先送り
・“誰に継がせるか決まっていない”という不確実さ
・“何から手をつけてよいかわからない”という手順面の不安
といった理由が挙げられます。
しかし、後継者が決まらないまま経営者が突然の病気や引退を迎えると、取引先との契約や金融機関との融資、従業員の雇用などに大きな影響を及ぼします。
結果として、会社の存続が危うくなるケースや後継者に大きな負担になってしまうことも少なくありません。
重要なのは、「まだ早い」と思えるうちに動き出すことです。
早めに方向性を定めておくことで、後継者の育成や社内体制の整備に十分な時間を確保でき、よりスムーズな承継が実現します。
2. “引き継ぐもの”を整理する

事業承継と聞くと、「株式」や「代表権」など法的な手続きに意識が向きがちですが、実際にはそれだけではありません。
経営を引き継ぐということは、次の4つの資産を受け渡すことを意味します。
1.ヒト(人材):従業員の力、信頼関係、チーム文化、取引先などの人脈等
2.モノ(仕組み・ノウハウ):機械や建物、業務プロセス、技術、その他相続資産等
3.カネ(財務):資金繰り、借入、株式譲渡にかかる贈与税・相続税等
4.想い(理念・ビジョン):経営者としての価値観、判断基準、事業の存在意義
この中でも特に引き継ぎが難しいのが「想い」と「判断基準」です。
経営者自身が「なぜこの事業を続けてきたのか」「何を大切にしてきたのか」を言語化しておくことで、次の世代が“経営の軸”を理解しやすくなります。
3. 承継のタイプを見極める

事業承継には大きく3つの形があります。
親族内承継:子や親族が後継者となるケース
社内承継:役員や社員など、内部の人材が後継者となるケース
第三者承継(M&A):外部の企業や個人に事業を引き継ぐケース
どの形にもメリット・デメリットがありますが、どれを選ぶにしても共通して重要なのは、
「後継者候補との対話」
「現場・財務の見える化」
「ステークホルダー(金融機関・取引先・従業員)との信頼関係の維持」
です。
特に社内承継の場合は、経営者と後継者の関係性だけでなく、周囲が“次の体制”をどう受け入れるかが成功の鍵となります。
4. 今からできる3つの準備

では、来期に向けて今から何をすべきでしょうか。
橋本経営相談事務所では、以下の3つを「最初の一歩」として提案しています。
① 経営の棚卸し
財務・顧客・人材・設備・取引先など、会社の“今”を見える化します。
数字だけでなく、「社長しか知らないこと」「暗黙の了解になっていること」も書き出しながら、事業承継計画の土台を作っていきます。
② 後継者候補との対話
「まだ正式に決める段階ではない」としても、“未来の話”を始めることが重要です。
経営の難しさや責任だけでなく、経営者としての事業の存在意義・やりがい・夢・地域への想いを共有することで、後継者候補の意識が変わります。
しかし経営者と後継者の2者で事業承継の話し合いを進めるのは容易ではありません。
特に親族内承継の場合、経営者としての立場と家族としての関係が複雑に絡み合い、話し合いが進まないケースが多々あります。
そのようなときは、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターや当事務所等の第3者を活用しながら、話し合いを進めるのが効果的です。
③ 専門家との伴走
税務・法務・経営・組織の視点を横断して整理するには、専門家のサポートが欠かせません。
特に「どこから手をつけてよいかわからない」と感じる段階でこそ、経営全体を俯瞰しながら伴走してくれる専門家の支援を受けることで、事業承継計画の道筋が明確になります。
5. “引き継ぎの設計図”を描くことの意味

事業承継は、単なる経営交代ではなく、“次の時代に事業をつなぐプロジェクト”です。
そのためには、「いつ」「誰が」「何を」「どう引き継ぐか」を可視化した“設計図”が必要です。
橋本経営相談事務所では、この設計図づくりを支援する中で、次の3つの視点を大切にしています。
1.数字の見える化(財務・資金繰り・事業の利益構造等)
2.人と組織の見える化(役割・スキル・関係性・属人化している技術等)
3.想いの言語化(理念・価値観・判断基準・事業の存在意義等)
これらを丁寧に整理することで、「後継者が安定して引き継ぐことができる経営軸」が生まれます。
おわりに:次の世代へ、“想いと仕組み”を引き継ぐために

経営者が築いてきた事業には、数字では測れない価値が詰まっています。
その想いを確実に次世代へとつなぐためには、「まだ先の話」と思える今こそが最適な準備のタイミングです。
橋本経営相談事務所では、経営改善・資金調達・補助金活用の支援に加え、事業承継計画の策定や後継者育成の伴走支援も行っています。
経営者ご自身の想いを丁寧に聴き取りながら、次の世代への“橋渡し”をサポートいたします。
事業承継に関するご相談や初期診断をご希望の方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。