決算が近づくこの時期、多くの経営者にとって頭を悩ませるのが「経費の最終調整」と「来期に向けた投資計画」です。利益を圧縮して税負担を抑えることも重要ですが、同時に会社の未来につながる投資をどう判断するかが、経営の大きな分岐点となります。
本記事では、節税と成長投資をどのようにバランスさせるべきか、その視点や実務のポイントをお伝えします。
1. 決算期に経営者が直面する課題

決算前になると、多くの経営者は「できるだけ利益を圧縮して節税したい」という発想に傾きがちです。
しかし「節税のためだけの支出」を行うと、短期的には税負担を減らせても、中長期的な利益を生む力を弱めてしまうリスクがあります。
一方で、決算期は来期以降の成長に必要な投資を先行的に行えるチャンスでもあります。投資を「経費」として計上することで節税効果も得られつつ、翌期の事業成長に備えることができるのです。
2. 経費の見直しポイント
経費の見直しは「削る」だけでなく「整理」することが大切です。具体的には:
- 固定費の棚卸し:長年契約している外注サービスやサブスクリプションが本当に必要か確認
- 交際費・広告宣伝費の効果測定:成果につながらない支出は翌期以降の改善余地あり
- 人件費の適正化:残業代・臨時手当など、一時的な増加要因かどうかを把握
この作業を通じて「本当に必要な経費」と「削減できる経費」を峻別することができます。
3. 投資として考えるべき領域

特に決算期に検討すべき投資領域は以下です:
- 営業・マーケティング強化:来期の売上に直結する販促活動やWebマーケティングへの投資
- IT・DX投資:業務効率化や生産性向上につながるシステム導入(補助金活用の余地あり)
- 人材育成・採用:社員研修や教育制度、将来を担う人材の採用は“費用”ではなく“資産”
- 設備更新:老朽化した設備や機械を入れ替えることで品質・生産性が向上し、長期的なコスト削減にも寄与
このような投資は「節税」以上に会社の未来を作る源泉となります。
4. 経営判断の基準
「これは経費か、投資か?」を迷ったときは、次の問いかけが有効な場合があります:
- 来期以降の売上増加に寄与するか?
- 社員の生産性・働きやすさを高めるか?
- 顧客満足度やブランド力の向上につながるか?
5. 実務でのアクションステップ

- 資金繰り表を確認:投資余力を正確に数値化
- 税理士・顧問と相談:節税効果と投資の効果を両面で検討
- 優先順位を明確化:今期中に実行すべき投資と、来期以降でよい投資を仕分け、優先順位を明確にする
- 補助金の活用を検討:IT導入補助金やものづくり補助金、省力化補助金等を併用すれば投資効果をさらに高められる
決算前は、単なる「支出の調整」ではなく、会社の未来を描く大切な経営判断の場です。1年の振り返りとして、節税と成長投資の両立を意識し、短期的な数字合わせにとどまらない戦略的な意思決定を行うことが重要です。
当事務所では、資金繰り改善や補助金活用、経営計画策定のサポートを通じて、経営者の皆さまが最適な判断を下せるよう伴走しています。ぜひ、お気軽にこちらからご相談ください。